−レッツ☆ウォー− 


おつきさま☆戦争(2006.7.19)

「いっちゃん、お月様はここから見ると小さくて白くて、毎日形が少しずつ変わってゆくわ。遠い星なのにちゃんと見えるし、空に浮いているようね」
 遅くなった学校の教室。部活は終わっているが、奴は教室に一度戻る癖がある。この時間だとまだ残っているのでは? と覗いたところ、双葉は窓際で茜空を一人見上げていた。俺を待ってくれていたらしい。
「じゃあ、月から見たここはどう見えるのかしら。月よりも地球は大きいのでしょう? だったら、ここから見る月よりも大きな、蒼い星が空に浮いて見えるのかしらね? 月の空は何色かしら。青い空色に地球が紛れて見えなかったら、何だか悲しいわ」
 紫へと変わってゆく空に、白い穴が開いている。それを見ながら、振り向きもしない双葉は俺に語りかける。
「よく、真っ暗なところに地球が半分浮いてる写真は見るよな。月には青い空なんてないんじゃないか?」
 窓に寄りかかって双葉に習う。満ちた月からここはどう見えるのか、そんなのは正直分からない。
「そうね」
 冷たく言いすぎただろうか。短い一言が寂しそうに聞こえて、夢を壊したかと心配になる。
 天然のくせに、双葉は時々信じられない夢を見せる。大人が忘れたようなものを、俺が失くしそうなものを、見せてくれる。俺はそれを大切にしなくてはならない。
「地球は水の惑星だ。月の空が青くたって、きらきらして見えるだろうよ」
「……うん。私達のいる地球が輝いてくれれば、たとえ空が青くても、蒼は関係なく見えるわね。真っ暗な夜の海に、蒼い硝子球を浮かべたような綺麗な景色だったら、それも私は嬉しいわ」
 双葉は静かに立って、やっと俺を振り返る。嬉しそうな笑顔。
 うちの幼馴染みはまるで月の姫様だな。そう、今の双葉は空に神様ん家があるなんて信じた奴と同じ人間には思えない。とは言わない。
 ……さ、帰ろうか。

☆ 本日の試合結果。双葉勝利。


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